「固定電話代を削減したい」と考えている人は多いかもしれない。固定電話が必要なければ解約するのが一番の節約になるのだが、必要としているならそういうわけにはいかないのが困ったもの。
なんだかんだで固定電話を使う機会も多いので、今回はIP電話の「My 050」とIP電話機(いわゆるビジネスフォン)を使って固定電話代わりにする作戦を実施した。
結果として、発着信ができればいいという用途なら問題なく使える環境になったので目的は果たしたといえる。複雑な設定をしていない分多少不便な点もあるが、特に問題はない。
そこで、この記事ではブラステルの「My 050」とIP電話機を使って電話代を削減する方法を紹介する。
050番号で問題なく、電話代削減を主目的とするならとてもオススメなので必見。
My 050とはどのようなサービス?
最初にMy050がどのようなサービスなのかについて簡単にチェックしておこう。050番号を利用できるIP電話サービスの中では比較的使いやすいのでオススメ。
なお、昔は「050 Free」という名称でサービスを提供した。こちらを契約していた人は、契約が失効していない限りそのまま利用できる。
サービス概要
サービス名 | My 050 |
---|---|
運営企業 | ブラステル株式会社 |
基本料金 | 550円/6ヶ月 |
支払方法 | ・クレジットカード ・スマートピット ・マイペイメント ・クーポン ・カードリチャージ |
My 050を使う最大のメリットは基本料金が6ヶ月で550円ということ。ほかの050IP電話サービスでは110円~550円/月程度の料金が発生するため、より安価に運用したいなら見逃せない。加入電話に至っては1,760円~1,870円/月なので論外。
通話料については次に紹介するが、こちらも安価なので価格面のメリットは大きい。登録時の本人確認に手間がかかるなどのデメリットはあるが、総じてオススメのサービスといえる。
通話料金の仕組み
通話料金 | ・日本国内固定宛: 10.56円/3分 ・日本国内携帯宛: 19.80円/分 ・国際(アメリカ本土): 6.49円/分(非課税) ・国際(イギリス): 38.50円~63.50円/分(非課税) ・国際(中国): 6.83円/分(非課税) |
支払方式 | プリペイド式 |
My 050の通話料金は上記の通り。
一般的な加入電話では固定宛が9.35円/3分~44円/45秒と複雑になっている。今後は9.35円/3分に一律化される予定だが、基本料金の有無を考えると微妙な差。
ただし、携帯宛の通話料も17.6円/分とMy 050より安価だが、基本料金分を埋めるほどではない。
NTTのひかり電話なら固定宛が8.8円/3分、携帯宛が17.6円/分。固定宛・携帯宛ともにやや安価になっている。とはいえ、こちらも基本料金が550円/月かかる。
運用方法の概要
それでは早速運用方法を紹介する。機材の詳細については後述するので、あわせて参考にしてほしい。
使用しているネットワーク構成は、上流側から順番に並べると以下の通り。
- インターネット回線(NURO光)
- ONU(FG4023B)
- ルータ(TP-Link Archer C80)
- スイッチングハブ(TP-Link LS105G)
- IP電話機(Grandstream GXP1610)
なお、上記全ての区間はLANケーブルによる有線接続になっている。
IP電話機に直接SIPアカウントを設定して通話する仕組みで構築しており、AsteriskをはじめとしたIP-PBXソフトウェアは使用していない。
今後はAsteriskを使用してネットワークを改造するかもしれない。多少不便な点もあるしネ☆
電話を電話として使えればいいという用途なら構築も簡単なので、この方法がオススメ。
使用する機材
使用する機材についても簡単に紹介する。
ルータやONUなどの基本的なネットワーク機器については以前の記事でも簡単に紹介しているので、今回はIP電話に関連する機器をピックアップしてみた。
ルータやONUについても知りたい人は、以下の記事もあわせて確認してみてほしい。
IP電話機(Grandstream GXP1610)
今回使用したIP電話機はGrandstream GXP1610で、これはSIPアカウントを1つ登録できるタイプのエントリーモデルのもの。
これはAmazonで5,500円くらいで購入したもの。購入時はMy 050で発着信ができれば何でもいいと思ったのでこれを選んだ。
スイッチングハブ(TP-Link LS105G)
IP電話機は有線接続にしか対応していないので、LANケーブルで接続する必要がある。
設置場所はONUやルータを置いている場所から離れているため、直接LANケーブルを引くのは非現実的。すでにPC用に引いているケーブルがあるので2本あったら邪魔だしネ☆
ということで、PC用に引いているケーブルを近くでスイッチングハブを使って分岐し、それをIP電話機に接続する作戦にした。
スイッチングハブに選んだのがこのTP-Link LS105Gだ。なんだかんだで宅内のネットワーク機器はTP-Linkが多い。
LANケーブル
スイッチングハブを設置したことによってLANケーブルが足りなくなったので追加購入。
今まではルータからPCをつなぐケーブルが1本必要だったが、今後は「ルータとスイッチングハブ」「スイッチングハブとPC」「スイッチングハブとIP電話機」で3本必要になる。PC用と電話用で2本というわけではないので注意だゾ☆
ということで2本のLANケーブルを追加購入。スイッチングハブは近くにあるため、いずれも2mのものを選んだ。
IP電話機(GX1610)の設定方法
準備ができたら、早速通話ができるように設定しよう。今回はすでにMy 050が開通しているものとして手順を紹介する。
もし、まだ開通していないならブラステル公式サイトから契約手続きをしておこう。新規契約時には本人確認に時間がかかるため、できるだけ早く手続きしておこうネ☆
具体的な設定手順は以下のとおり。
- LANケーブルと電源ケーブルを接続して電源を投入する
- NextScrを押してローカルIPアドレスを確認する
- WebブラウザにローカルIPを入力して管理画面にアクセスする
- 初期ID/PWを入力してログインする
- ログインパスワードを変更する
- SIPアカウントを設定する
- NAT Traversalを[Keep-Alive]に設定する
- オーディオ設定を変更する
- ローカルIPを固定する
- 認証状況を確認する
これからそれぞれの手順について詳しく解説するので、順番に進めることをオススメする。
なお、これから紹介する手順はファームウェアのバージョンによって多少異なるかもしれない。
また、公式でサポートしている方法ではないので何があっても自己責任だゾ☆これは覚えておこうネ。
手順1 LANケーブルと電源ケーブルを接続して電源を投入する
最初に、ケーブル類を正しく接続しよう。上記の画像を参考にし、「LANケーブル」「電源ケーブル」「受話器のケーブル」を接続する。
端子を見ればどこに何を接続するか書いてあるので、よく見れば間違えることはないと思う。
電話機用ヘッドセットを使用したい場合は、受話器用端子の横にある「HEADSET」のところに接続すればOKだ。
手順2 NextScrを押してローカルIPアドレスを確認する
電源ケーブルを接続すると自動で電源が入る。しばらく放置すると電話機が起動し、上記の画面が表示される。
ここで一番左をみると「NextScr」とあるボタンがあるので、これを押す。押すとローカルIPが表示されるので、覚えておこう(次の作業で使う)。
覚えられない場合はメモしておくと安心だゾ☆
手順3 WebブラウザにローカルIPを入力して管理画面にアクセスする
次にPCでWebブラウザを起動し、アドレスバーに先程確認した電話機のローカルIPを入力する。
忘れていたら手順3を参考にして再確認しようネ☆
手順4 初期ID/PWを入力してログインする
政情にアクセスできると上記のページが表示されるので、初期IDとパスワードを入力しよう。GXP 1610の初期ID・パスワードは以下の通り。
- 初期ID: admin
- 初期PW: admin
問題なくログインできたら次の手順に進もう。
手順5 ログインパスワードを変更する
初回ログイン時はパスワードを変更するページが表示される。初期PWのまま運用するのはセキュリティ面で危険なので、複雑なPWに変更しておこう。
もし、変更画面が表示されない場合は、[MAINTENANCE]から[Web Access]にアクセスしてパスワードを変更しておくと安心。具体的な手順は同様。
手順6 SIPアカウントを設定する
パスワードの設定が完了した、続いてSIPアカウントを設定していく。まずは右上の[ACCOUNT]を選択し、[Account 1] > [General Settings]の順に進む。
この手順で進むと、以下のページが表示されるハズ。
上記のページが表示されたら、以下の情報を入力しよう。
- SIP Server: softphone.spc.brastel.ne.jp
- SIP User ID: My 050の公式サイトで確認する[ユーザー ID]
- Authenticate Password: My 050の公式サイトで確認できる[パスワード]
My 050を使用する場合、SIP Serverに入力する文字列は[softphone.spc.brastel.ne.jp]で固定。IDとパスワードはユーザーによって異なるので、次に紹介する方法でチェックしよう。
電話機に設定するSIPアカウントの情報は、以下の手順で調べられる。
- My 050のサイトにログインする
- 左ペインの[SIP アカウント]をクリックする
- 右ペインのユーザーIDとパスワードをチェックする
この方法で控えたIDとパスワードを入力しておくので、ちゃんとメモしておこうネ☆忘れるともう一度チェックする羽目になるゾ☆
手順7 NAT Traversalを[Keep-Alive]に設定する
続いて以下の手順でNAT TraversalをKeep-Aliveに設定する。My 050で通話する場合、この設定をしないと通話できなくなるので必須だ(2022年2月時点)
まずは右上のメニューから[ACCOUNTS] > [Account 1] > [Network Settings]の順番にクリックする。
Network Settingsの中に[NAT Traversal]という項目があるので、プルダウンから[Keep-Alive]を選択しよう。
最後に[Save and Apply]をクリックして完了。
手順8 オーディオ設定を変更する
My 050で通話するにはオーディオ設定の変更も必要だ。これも設定しないとちゃんと通話できないので忘れないようにしようネ☆
オーディオ設定を行うときは、右上のメニューから[ACCOUNTS] > [ACCOUNT 1] > [Audio Settings]の順にアクセスする。
すると上記のようなページが表示されるので、画像を参考にしてコーデックを[PCMU]に設定すればOK。
これでオーディオ関連の設定は完了なので、次の手順に進もう。
手順9 ローカルIPを固定する
最後にローカルIPを固定する。IP電話を使うのに本来この設定は必要ないが、My 050を使っているとローカルIPが変動した途端につながらなくなる現象が発生した。
これが発生するとリセットしてまた最初から設定しなければならないので、固定しておくのがオススメ。
まずは右上のメニューから[NETWORK] > [Basic Settings]の順にアクセスする。
アクセスすると上記のページが表示されるので、ローカルIPを固定しよう。特にこだわりがなければ手順2で確認したローカルIPに固定してしまうのが安心。
もし、別の数値に変更したい場合はほかのデバイスと被らないものにしようネ。被っていると通信が安定せず、双方ともデバイスをまともに使用できない。
手順10 認証状況を確認する
全ての設定が完了したら、[GRANDSTREAM]のロゴをクリックしてトップページに戻る。
[Account Status]内の[SIP Registration]を確認し、緑字で[YES]と書いてあればOK。もし赤字で「NO」と記載されているときは、通常電話機を再起動すると正常に認証される。それでも認証されないときはSIPアカウントの設定が正しいか確認してみてほしい。
問題がなければどこかに発信し、正常に通話できるか確認する。通話品質に問題がなければそのまま運用してOK。
My 050 + IP電話機で固定電話を運用するメリット
My 050を活用してIP電話を固定電話化するのは設定が面倒だが、メリットがいくつかある。ここでは実際に運用してみて感じたメリットを紹介する。
電話代を削減できる
主目的が[電話代の削減]だったのもあって、これが一番のメリット。ひかり電話で固定電話を運用すると550円/月が継続的にかかるが、これを大きくカットできたのが非常に大きい。
電話を掛けるケースはそこまで多くないため、最大のメリットがこの基本料金削減。さらに、ひかり電話では440円/月のオプションになっているナンバーディスプレイが標準付帯しているのもメリット。
合計で990円/月が550円/6ヶ月になるので、「固定電話は必要だがコストを削減したい」と考えている人にオススメ。
1つのSIPアカウントを複数のデバイスに登録できる
My 050では、1つのSIPアカウントを複数のデバイスに登録すれば同時に着信し、先に受けたほうで通話できる。
IP電話サービスでは1つのデバイスでしか使用できないものも多いため、これは大きなメリット。
Asteriskを使わずに複数の電話機を使い分けることも可能なので、簡単に複数デバイスで使い分けたい人は一度試してみてほしい。
固定電話とスマホ、固定電話機2台、スマホ複数台のように組み合わせは自由なので汎用性が高い。
My 050 + IP電話機で固定電話を運用するときの注意点
My 050はとても便利なサービスだが、いくつか注意しておきたいポイントがある。
もし、似たような運用方法を検討しているなら、以下のポイントをあらかじめチェックしておくのがオススメ。
通話料の前払いが必要になる(プリペイド式)
My 050は通話料を事前にチャージして使うタイプのプリペイド式サービスだ。一般的なIP電話とは違って後払いはできないので、この点には注意しよう。
通話中に残高がなくなると切れてしまうので、十分な金額をチャージすることが大切。オートチャージの設定も可能なので、気になる人は各自調べてみてほしい。
留守電は搭載されていない
My 050では留守電サービスを提供していない。留守電が必要な場合は、Asteriskで留守電を構築するか留守電に対応しているIP電話機を使用する必要がある。
簡単に留守電を使用したいと考えているなら、標準で留守電を提供している別のサービスを利用したほうが楽になる(多分)
保留音が流れない
GXP 1610には保留音を流す機能を搭載していない。そのため、保留音を流したいと思うならこれまたAsteriskなどが必要だ。
こちらも環境構築に手間がかかるので、必要とするなら注意しよう。
通話できない不具合が発生するときがある
きちんと設定したのにもかかわらず、通話できない不具合も報告されているので覚えておこう。通話できない不具合が発生したときに有効な対処法は以下の通り。
- 電話機を再起動する
- NAT Traversalを[STUN]に変更する
- GXP 1610を最初に認証する(複数デバイス使用時)
この不具合には「発信できない」「通話できない」「発着信の両方ができない」などのパターンがある。発信してもビジートーンのみが聞こえる場合もこれに該当。
もし、不具合が発生したら上記の対処法を試し、それでもだめなら最初から設定をやり直してみよう。
使用できるSIPアカウントが1つのみ(GXP1610の場合)
これはGXP 1610の仕様だが、登録できるSIMアカウントは1つのみだ。
そのため、複数のSIPアカウントを使い分けたいなら、2SIPや4SIP、それ以上に対応している上位機種を購入しよう。
IP電話機を購入するときは、対応アカウントの数をはじめとした基本的な仕様はしっかり確認しておくことが大切。
固定電話の削減にはMy 050がオススメ!
多少不便な点もあるが、固定電話の使用頻度が低く電話代を削減することが主目的なら、My 050はとても優秀なサービスだと感じた。
新規取得に時間がかかるのは難点だが、一度番号を取得してしまえば解約・失効しない限りそのまま運用できるので利便性が高い。一般の固定電話と違って引っ越しで番号が変わることもないし。
もし、固定電話が必要だけどコストが掛かってもったいないと感じているなら、ぜひ今回紹介した方法を試してみてほしい。別のIP電話機でも、基本的には同様の方法で設定すれば使えるようになると思う。